テクニカルライティング教室

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テクニカルライティングで避けたい日常の言い方・書き方

私たちは日本語を使って生活しています.
当たり前のことです.

当然,日本語の言い回しを使います.
それは,私たちの感性と合っていて,
話したり書いたりするとき,
なんの違和感も抱きません.

ところで,テクニカルライティングは,
科学技術に関することを,論理的に,
明晰で,正確に書くことを要求します.

そうすると,私たちの日常の言い方や書き方だと,
論理的で正確なテクニカルライティングに
ふさわしくないものがあります.

避けるべき日常生活の言い方・書き方があるのです.
理系文を書くとき注意すべきです.
それを以下に説明します.

目次

1.あーしてこうしてあーなってこうなって ダラダラ文

私たちは書きたいことをエンエンと書き続けるクセがあります.
これは私たちがものごとを言い表すときの特徴です.

「あーしてこうしてあーなってこうなって」という調子で
話がエンエンと続きます.
それをそのまま文章にするとダラダラ文になります.
これは日本語の特徴です.

私たちが使う日本語は
もともと句読点を持っていませんでした.

源氏物語の原文は言葉がエンエンと続く文です.
それで私たちは何の問題もありませんでした.
だから,私たちは話を区切ることなく,エンエンと続けがちです.

句点(。または.)を使うことの意味は,
一つの文は一つのことを書く(一文一義)ということです.

一つのことを書いたらそこで文は終わるのです.
それを示すために,句点を打ちます.

でも,そのことを十分に認識しなくて理系文を書くと,
私たちは「あーしてこうして・・・」という文になって,
ダラダラと言葉をつなげていきます.

書きやすいし馴染んでいるからです.
私たちは句点をまだ十分に使いこなしていないのです.

それは,句読点が新しい日本語の書き方だからです.
句読点が日本語に導入されたのは明治時代以降なのです.

テクニカルライティングでダラダラ文が困るのは,
一つの文で複数のことが書かれ,
文末に行くと話が変わってしまうことです.

これでは,論旨が不明で明晰な文にはなりません.
だから,テクニカルライティングでは一文一義を
徹底させます.

例をあげましょう.

例文1

薄型ディスプレイの技術発展は著しく,
その代表例である液晶ディスプレイは,
テレビでもスマホでも使われており,
それは薄くてきれいな画像だから,
私たちの目を楽しませると同時に
多くの情報を与えてくれるのだが,
最近では新しいディスプレイとして
有機ELが開発され,
スマホなどで実用化されたと聞いている.

このような文章を私たちは書きがちです.
一つの文に多くのことが書き込まれており,
話が文末にいくと別のところにジャンプしています.

テクニカルライティングでこのように書くと,
読み手は書き手の論旨を理解できませんし,
明晰とは言えません.

この文は次のように書きかえて,
一文一義を徹底させると,
論旨が明快になり明晰な理系文になります.

例文2 改良文

薄型ディスプレイの技術発展は著しい.
その代表例である液晶ディスプレイは,
テレビでもスマホでも使われている.
しかも,それは薄くてきれいな画像だから,
私たちの目を楽しませると同時に
多くの情報を与えてくれる.
さらに,最近では新しいディスプレイとして
有機ELが開発され,
スマホなどで実用化されたと聞いている.

文章の改訂は難しくないです.
接続語のところで句点をつければよいのです.

例文1では,

「著しく,」を「著しい.」,

「使われており,」を「使われている.しかも,」

としました.

「与えてくれるのだが,」を「与えてくれる.さらに,」

としました.

一文一義が徹底され,
論理的で明晰な文になりました.

2つ付け加えることがあります.

1つは,接続詞をうまく使うことです.
「使われており.」を「使われている.しかも,」と
「しかも,」を加えました.

そうすると,次の文が強調され,
液晶ディスプレイの特徴が
クッキリと浮かび上がります.
「しかも,」がないと,次の文のインパクトがなくなります.

2つ目は,逆接語(だが)の使い方を
間違えないことです.

上の例で「与えてくれるのだが,」を
「与えてくれる.さらに,」と改訂しました.

原文の「与えてくれるのだが,」の「だが」は
前のことを打ち消して次につなげる意味があります.

でも,ここでの使い方は,打ち消しの意味はなく,
「さらに」か「そして」という意味で,
次の話題を導き出すために使われています.

だから,「だが」は「さらに」と改訂しました.

このように私たちは逆接語を何気なく使いがちです.
それを使うとき,
「はたしてそれは逆接の意味があるか」と自問してみるとよいです.

2.「~みたいな」「~ていうか」 あいまい表現

 「~みたいな」「~ていうか」は
日常会話でよく使います.

友人数人でお茶しようとして
「カフェ行く?みたいな」と言い合って,
カフェへ行きます.
ここで「カフェへ行く」とハッキリ言うことは少ないです.

このように私たちはあいまい表現を好みます.
これは稲作を中心とした
農耕社会で生きていく知恵です.
みんなと協調し波風立てないで仲良くします.

だから,日常生活では,
ほとんど断定表現はしませんし,
自分の考えをハッキリとは言いません.
角が立つからです.

あいまい表現は社会生活の潤滑油なのです.

しかし,テクニカルライティングではこれは困ります.

論理的でなくなるからです.
書き手の主張があいまいでは,
どんな技術について
何を書き手が伝えたいのか,
読み手は理解できません.

例をあげましょう.

例文3

試作品A-3の物性αの値は14である.
この値は先月度の試作品A-2のそれより
少し改良されているようであり,
目標に近くなったといえるかもしれない.
今後さらに改良を続けていきたいと考えているので,
次月度は目標に近づけられるだろう.

日本人としてこの書き方は,
そんなに違和感を抱かないでしょう.

でも,この書き方はあいまいで,
さらに数値データが十分に記されていませんから,
論理的で正確とは言えません.

読み手は,書き手が試作品A-3が
A-2からどの程度改良されているのか
明確に把握していないと,判断します.

また,次月度の目標値が不明ですので,
どの程度改良できると考えているのか,
読み手には伝わりません.

読み手は次のように結論づけます.
書き手は開発の現況をよく理解していないし,
開発を進める具体的な方法と計画を
持っていない,と.

書き手がこの技術開発の担当者だと,
シビアな上司なら担当者を変えようとするでしょう.
たいへんな結果になります.

この例文は,数値データを盛り込んで,
書き手の意見を明確に述べれば,
論理的で正確な理系文となります.

例文4 改良文

試作品A-3の物性αの値は14±1である.
この値は先月度の試作品A-2の
それ(11±1)より27%改良されており,
目標値(20)に対して70%の達成率である.
次月度は,試作品に添加剤γ7を
0.01~0.05mol%添加し
その効果を検討する.
この添加剤は類似製品Bにおいても
物性αの改良効果があったからである.
その実績から考えると,
この添加剤の使用によ
り物性αは目標値に対して
18±1に向上すると期待される.

このように書けば,上司は安心して
開発を書き手に任せるでしょう.

3.私はパフェ,ボクはコーヒー 主語と述語の不一致

カフェで注文するとき,
「私はパフェ」「ボクはコーヒー」と言います.

日常生活で使っているごく普通の言い方です.

これは,私の注文したいのはパフェであり,
ボクの注文したいのはコーヒーであることを
表現しています.

何もこんなことを仰々しく書かなくても,
日本人なら当然理解します.

でも,これらの文を言葉どおりに考えてみましょう.

これらの文の主語は「私」「ボク」です.
述語は「パフェ」「コーヒー」です.

文の字面上の意味は,私=パフェ,
ボク=コーヒーです.

私とボクは人間で,
パフェやコーヒーではありません.

主語と述語は対応していないのです.

だから,これはおかしな文です.
だが,このように考える日本人はいません.

「私は」には「私の注文したいのは」という
意味が含まれていいます.

私たちはそれをよく理解しています.

日本語は,言葉の表面に
示されている以上の意味を,
言葉の中に含ませています.

そうすることによって,
字面上対応していない主語と述語は
うまく対応できるのです.

私たちはそれを理解できます.
日本語は,話し手の言いたいことを
聞き手が察することが当たり前の言葉なのです.

その意味で主語と述語は
対応していなくても,よいのです.
そこは察するところなのですから.

しかし,テクニカルライティングは
論理的で正確であることが要求されます.

書き手の言葉に別の何かが含まれていると
読み手が察して,
書き手の真意を思いめぐらすことはありません.

真意は文章として論理的で
正確に表現されねばならないのです.

このケースでは主語と述語を対応させるのです.

テクニカルライティングでは,
主語を「私の注文したいのは」とし,
「私の注文したいのはパフェです」として,
主語と述語を対応させるのです.

例をあげましょう.

例5

サンプルAおよびBの物性βを
規格ZZの方法で測定した.
AおよびBは,それぞれ5および9であった.

この文ですと,サンプルA=5となり,
サンプルB=9となります.
サンプルAとBは,5や9という数値になります.

そんなことはあり得ません.
サンプルAの物性βの値が5であり,
サンプルBの物性βの値が9なのです.
だから,そのように正確に記すのです.

例6 改良文

サンプルAおよびBの物性βを
規格ZZの方法で測定した.
AおよびBの物性βの値は,
それぞれ5および9であった.

このように改訂すると,
主語と述語が対応し,
論理的で正確な理系文になります.

4.まとめ

テクニカルライティングは,
科学技術に関することを,論理的に,
明晰で,正確に書くことを要求します.

そうすると,
私たちの日常の言い方や書き方だと,
論理的で正確なテクニカルライティングに
ならないものがあります.

テクニカルライティングで
避けるべき日常の言い方・書き方と
その改訂法は,以下のとおりです.

1)ダラダラ文を短文に変え,一文一義を徹底する
私たちは書きたいことを
エンエンと書き続けるくせがあります.

しかし,テクニカルライティングでは,
一文一義を徹底させます.

そのためには,
接続語のところで句点を打ち,
適切な接続詞も使い,短文にします.

そうすると論旨が明快になり
明晰な理系文になります.

2)あいまい言い方をしない
「~みたいな」「~ていうか」のような
あいまいな言い方を私たちは好みます.

しかし,テクニカルライティングで
このような書き方では,
論理的で正確になりません.

本稿で取り上げた例では,
数値データを盛り込んで,
書き手の意見を明確に述べます.

そうすると,論理的で正確な理系文となります.

3)主語と述語を対応させる
日本語は,話し手の言いたいことを
聞き手が察することが当たり前の言葉です.

その意味で,
主語と述語が対応しないことが多いです.

しかし,テクニカルライティングは
論理的で正確に書くことが要求されます.

だから,主語と述語を対応させて,
文意を正確に表現します.

そうすると,論理的で正確な理系文になります.


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