目次
1.はじめに
企業では,新システムや新製品の開発など
多くの研究開発が行われています.
研究途中や終了時に,担当者は研究成果を
研究報告書や技術報告書(以下では研究報告書とします)
としてまとめ,上司に提出します.
研究報告書は以下に述べる特徴を持っています.
それに合った書き方をすると,
研究担当者であるあなたの言いたいことが認められ,
あなたの評価が高まります.
2.企業の研究報告書の特徴
1)正確・明晰・簡潔であること
報告書は,正確・明晰・簡潔が求められます.
上司が報告された結果に基づいて,
「次に何をすればよいのか」をすみやかに判断するためです.
2)主題(研究目的)と結論が対応しており,結論が明確であること
研究目標と結論が対応しており,
かつ結論が明確であることが求められます.
3)上司が適切な判断を下せる内容であること
成果の研究計画に対する位置付け,
今後の展望や問題点が明確であることが求められます.
上司が研究成果に基づき適切な判断を下すためです.
4)特許に言及してあること
企業,特に製造メーカーでは特許は重要です.
研究成果と自社・他者特許との関係や
出願可能性についての記載が求められます.
研究成果が新規であれば,特許出願を検討すべきです.
5)定型文書である
研究報告書は定型文書となっていることが多いです.
定型文書のメリットは,同一形式で報告内容が記載されていますから,
読み手は,どこに何が書かれているかを容易に把握できます.
だから,ストレスなく読むことができます.
これは適切な判断につながりますので重要なポイントです.
3.定型文書の体裁
研究報告書は一般的には概報と詳報から成ります.
概報は報告書の最初に置かれるもので,
報告内容のポイントが簡潔にまとめられています.
それだけを読めば,報告内容の重要なことが
すべてわかるように書かれています(そうすべきです).
なので,上司は速やかに成果に基づいて今後の方針を決断できます.
詳報は,研究内容が詳細に書かれています.
概報を読んだだけでは理解できない箇所を確認するためですし,
関心のある人が詳細を知るためです.
体裁に合わせて書くと,上司などの読み手は
書き手であるあなたの報告したいことを容易に理解してくれます.
研究報告書(概報)のテンプレートを載せましたので,参照してください.
研究報告書(概報) PDF ダウンロード
4.企業の研究報告書の例
ある材料の研究成果を例として取り上げ,
企業の研究報告書(概報)の書き方を述べます.
取り上げる研究例は,
チタニア(酸化チタン(iV) TiO2)の新規作製法と光触媒性です.
1)チタニアの光触媒性について
チタニアの光触媒機能に関する研究例は多いですし,
実用化もされており,材料分野ではポピュラーなので,
ここで取り上げることにします.
まず,チタニアと光触媒性について,簡単に解説してから本論に入ります.
・チタニア
チタニアは3つの結晶構造を取ります.
その一つであるアナターゼ型結晶に紫外線を照射すると活性化され,
チタニア表面の有機物を分解します.
これをチタニアの光触媒性と言います.
なお,最新の研究によると,
光触媒性はチタニアの他の結晶系である
ブルッカイト型結晶でも示される例がありますし,
可視光でも活性化される研究例もあります.
・光触媒性
光触媒性の原理は,
水中のチタニア電極に紫外線を照射すると
水が分解されるという現象(本多―藤嶋効果)です.
(A. Fujishima, K. Honda, Nature, 238 (1972) 37-38.)
発見者は,東京大学の本多健一教授と
大学院生の藤嶋昭先生(いずれも当時)です.
なお,チタニアの光触媒性については
多くの解説や総説がありますから,
興味のある方はそちらを参照してください.
たとえば,
”TiO2 photocatalysis: Design and applications”,
K. Nakata and A. Fujishima. J. Photochem. Photobiol. C: Photochem. Rev., 13 (2012) 169–189
などです.
・ゾルーゲル法
セラミックスを作製する方法の一つに,
金属化合物を含む溶液からセラミックス前駆体(ゾルといいます)を作製して,
それを固体化(ゲルといいます)して焼成する方法があります.
これをゾルーゲル法といいます.
この方法のメリットは,
(i)簡便な装置で作製できる,
(ii)低コストで作製できる,
です.
さらに,作製法の改良によりチタニアの光触媒性能を高めることが可能ですから,
チタニアの作製と光触媒性の研究例も多いです.
ゾルーゲル法に関する最近の総説は,たとえば,
”The evolution of ‘sol–gel’ chemistry as a technique for materials synthesis”,
A. E. Danks, S. R. Hall and Z. Schnepp, Mater. Horiz., 3 (2016) 91-112
などがあります.
チタニア薄膜はゾルーゲル法でも作製できます.
すなわち,チタン化合物を有機溶媒に溶解してチタニアゾルを作製し,
それを基板に塗布してゲル膜とし,
焼成するとアナターゼ型結晶のチタニア薄膜が得られます.
2)研究報告書に書く研究成果
ここで取り上げる研究は,
改良ゾルーゲル法による結晶性チタニア薄膜の作製とその光触媒性です.
その概要は以下のとおりです.
ゾルーゲル法によるチタニア薄膜の作製と光触媒性について,
多くの活発な研究がなされています.
しかし,これまではゾルーゲル法によって得られるチタニアゾルはアモルファスなので,
それを基板に塗布後,結晶化するために400℃以上で焼成しなければならず,
工程が長時間というデメリットがありました.
溶媒を水としてゾルの段階でアナターゼ型結晶を作製する方法を開発すれば,
焼成プロセスが省略され省エネルギー化でき,製造コストが下がります.
さらに,有機溶媒を使わないので環境に優しい作製プロセスになります.
水を溶媒として用いるセラミックス作製法を水溶液プロセスと言いましょう.
(ただし,これはゾルーゲル法の一方法です)
研究担当者は,新たに水溶液プロセスで,
チタンテトラエトキシド(Ti(OC2H5)4)を原材料としてチタニアゾルを作製しました.
ゾル化には成功しましたが,チタニアゾルはアモルファスでした.
この結果は,研究報告書「水溶液プロセスによるチタニア薄膜の作製とその光触媒性」
(佐藤達彦,坪井翔,研究報告集,52 (2017) 21-30)(架空の社内報告書です)
で報告してあります.
そこで,原材料を四塩化チタン(TiCl4)に変えて検討を続けたところ,
アタターゼ型結晶を含むゾルが得られました.
それをガラス基板に塗布して高圧水銀灯を照射することにより,
結晶性がさらに良好になったチタニア薄膜を作製することに成功しました.
チタニア薄膜の具体的な作製法は次のとおりです.
四塩化チタンTiCl4 3.52 gを純水20gに溶解し,
20%アンモニア水5.6 gを加えました.
生成した水酸化チタンをろ過して純水で洗浄後,
この生成物をビーカーに移し,
純水20 gと35%HCl 0.78 gを加えて,60℃/2時間加熱しました.
チタニア前駆体(チタニアゾルA)が得られました.
このゾルをガラス基板にスピンナー法で塗布し,
チタニアゲル膜Aを作製しました.
それに高圧水銀灯で紫外線を10分照射して,
アナターゼ型結晶を含むチタニア薄膜Aを得ました.
比較のチタニア薄膜(比較試料)は従来法で作製し,
電気炉で550℃/30分焼成して得ました.
チタニア薄膜の結晶構造は,
X線回折(XRD)装置でXRDパターンを測定して解析しました.
なお,今回の研究報告書(概報)では光触媒性のデータを図で示し,
XRDパターンは割愛します.
詳報ではパターンを示して考察しますが,ここでは割愛します.
チタニアゲル膜Aはアナターゼと同定されました.
このことは,ゾルの段階でアナターゼ結晶が生成していることを示します.
以下に述べるように,
この結果はいままで報告例がありませんので新発見です.
紫外線照射されたチタニア薄膜Aもアナターゼと同定されました.
そのパターン強度はゲル膜Aのそれよりも大きいので,
チタニア薄膜Aの結晶性は,ゲル膜Aのそれより良好であることがわかりました.
さらに,XRDパターンの比較から,
比較試料のそれよりもやや良好であることもわかりました.
作製したチタニア薄膜の光触媒性を,光触媒試験法で調べました.
その方法は以下のとおりです.
試料をメチレンブルー水溶液に浸漬して
ブラックライトを用いて紫外線を照射しました.
メチレンブルーの分光透過率を測定して,
そのデータを使って溶液のメチレンブルー残存率(%)を求めて,
光触媒性を評価しました.
その結果,比較試料より良好な光触媒性を示すことが明らかになりました.
詳細は後述します.
以上の結果について報告書(概報)をまとめます.
なお,以下の報告書では,上述のとおりチタニア薄膜の光触媒性を図で示します.
試料の結晶構造については,XRD測定の結果を使いますが,そのデータは割愛します.
研究報告書(概報)の書き方も,
“実験報告書 「結果と考察」の書き方”と
“実験報告書を書くプロセス その例1”と
同様の手順に従って進めます.
3)報告書を書く前に
実験結果はすでにすべて揃っていますし,
その解析も終了し結論が得られているとします.
文献も特許も調べてあります.
でも,報告書を書く前にするべきことがあります.
①研究目的(課題)の確認
研究課題と研究目的を確認します.
研究課題は,
「改良水溶液プロセスによる結晶性チタニア薄膜の作製とその光触媒性」です.
研究目的は,
「ゾルの段階でアナターゼ型結晶が得られる作製法を開発すること」
および
「得られたチタニア薄膜の光触媒性を調べること」です.
②データの「見える化」
チタニア薄膜Aの光照射時間変化に対するメチレンブルーの残存率(%)を求めました.
用いた試料は,チタニア薄膜A,比較試料およびガラス基板の3種です.
その結果を表にまとめました.
次に,それをグラフ化します.
横軸を照射時間,縦軸を色素残存率(相対値)として示します.
なお,以下に書く研究報告書(概報)では,図のみ使用します.
詳報(割愛します)には両者とも載せるとよいです.
ここでデータの解析結果を確認します.
・チタニア薄膜の結晶構造(データは割愛します)
チタニア薄膜の結晶構造は,
X線回折(XRD)装置でXRDパターンを測定して解析しました.
チタニアゲル膜Aはアナターゼと同定されました.
このことは,ゾルの段階でアナターゼ結晶が生成していることを示します.
以下に述べるように,この結果はいままで報告例がありませんので新発見です.
紫外線照射されたチタニア薄膜Aもアナターゼと同定されました.
そのパターン強度はゲル膜Aのそれよりも大きいので,
チタニア薄膜Aの結晶性は,ゲル膜Aのそれより良好であることがわかりました.
さらに,XRDパターンの比較から,比較試料のそれよりもやや良好であることもわかりました.
・チタニア薄膜の光触媒性(図表を参照してください)
ガラス基板だとメチレンブルーは分解されません.
これは紫外線照射のみでは色素は分解しないことを示しています.
それに対して,チタニア薄膜Aも比較試料も色素は減少しています.
すなわち,チタニア薄膜Aおよび比較試料の120分後の色素残存率は,
それぞれ70%および76%であり,
チタニア薄膜の色素残存率は対応する比較試料のそれより少し低いです.
このことはチタニアが光照射により活性化され,色素を分解したことを示しています.
これは上記文献にも記載されていますので,
本研究のチタニア薄膜Aでも光触媒性が確認されました.
さらに,本研究で作製されたチタニア薄膜Aの光触媒性は,
従来の焼成によるチタニア薄膜のそれよりやや良好であることを示しています.
このことはXRD解析の結果
(チタニア薄膜Aの結晶性は比較試料のそれよりやや良好である)
と対応していますので,合理的です.
したがって,水溶液プロセスと紫外線照射という簡便なプロセスで,
結晶性が良好で光触媒性に優れたチタニア薄膜の作製法を発見したことがわかりました.
③既知の知識の確認
既知の報告書,論文や特許で本研究に関連するものを探しました.
(i)社内報告書
本研究を行うキッカケになったのは,
上でも述べた社内の報告書「水溶液プロセスによるチタニア薄膜の作製とその光触媒性」
(佐藤達彦,坪井翔,研究報告集,52 (2017) 21-30)(架空の社内報告書)です.
(ii)ゾルーゲル法
ゾルーゲル法については多くの文献があります.
本研究で参照したのは,
”The evolution of ‘sol–gel’ chemistry as a technique for materials synthesis”, A. E. Danks, S. R. Hall and Z. Schnepp, Mater. Horiz., 2016, 3, 91-112です.
水溶液プロセスについても書かれています.
(iii)チタニア薄膜の光触媒についても多くの研究例があります.
本研究ではチタニアの光触媒性の発見者(藤嶋先生)の総説,
”TiO2 photocatalysis: Design and applications”, K. Nakata and A. Fujishima. J. Photochem. Photobiol. C: Photochem. Rev., 13 (2012) 169–189
を参照しました.チタニアの光触媒に関して,
有機物の分解をはじめ最近の様々な応用が解説されています.
上の文献も含めて,本研究のように水溶液プロセスで,
ゾルの段階でアナターゼ結晶が作製された例は見つかりませんでしたので,
本研究の成果は新発見だとわかりました.
(iv)特許
チタニアの光触媒に関する特許は多くありますが,
本研究の成果が記載された特許やそれを推測させるような特許も見つかりませんでした.
なので,特許からも本研究の成果は新発見ですから,特許出願を検討すべきだと判断されます.
これで準備が整いました.
4)研究報告書(概報)を書く
報告書を書きます.
研究報告書(概報)のテンプレートを開きます.
添付した報告書(概報)を参照してください.
研究報告書(概報) PDF ダウンロード
概報は1ページで書きます.
簡潔に研究成果の重要なことを盛り込みます.
成果をアピールすることも忘れないでください.それは以下の順序で書きます.
①題名
題名には,主題(トピックス)(何について)と目的(何が書いているか)を盛り込みます.
主題は「改良水溶液プロセスによる結晶性チタニア薄膜」で,
目的は「結晶性チタニア薄膜の作製とその光触媒性」です.
題名は「改良水溶液プロセスによる結晶性チタニア薄膜の作製とその光触媒性」になります.
②報告者(所属,氏名)
報告者(研究担当者)全員の所属と氏名を書きます.
この研究は以下の2名で行いましたので,それを書きます.
なお,執筆者には○印を付けます.
技術開発部開発課 〇佐藤達彦,坪井翔
③結論または概要を書く
結論または概要を指定された枠内に簡潔に書きます.
研究結果をわかりやすくかつアピールできるよう工夫して書きます.
新規水溶液プロセスによりアナターゼ型結晶を含むチタニアゾルの作製に成功した.
このゾルをガラス基板に塗布後,高圧水銀灯により紫外線を10分照射して,
結晶性がさらに良好なチタニア薄膜を得た.
その光触媒性は,比較試料のそれより良好であった.
今後実用化研究にステージを上げる.
また,この成果は新発見であり特許出願を検討する.
④本文を書きます
書くスペースが少ないので,いずれの項目も正確・明晰・簡潔を心がけて書きます.
(i)研究目的を書く
本研究に至る経過を簡単に述べて,本研究の目的を記します.
われわれは水溶液プロセスでチタニアゾルの作製に成功したが,
得られたゾルはアモルファスであった1).
そこで,本研究の目的は,
①ゾルの段階でアナターゼ型結晶が得られる作製法を開発すること,
および
②得られたチタニア薄膜の光触媒性を調べること,である.
(ii)実験プロセスを書く
四塩化チタンTiCl4 3.52 gを純水20gに溶解し,20%アンモニア水5.6 gを加えた.
生成した水酸化チタンをろ過して純水で洗浄後,
純水20 gと35%HCl 0.78 gを加えて,60℃/2時間加熱した.
得られたチタニアゾルAをガラス基板にスピンナー法で塗布し,
塗布膜に高圧水銀灯で紫外線を10分照射してチタニア薄膜Aを得た.
比較のチタニア薄膜(比較試料)は従来法で作製し,
電気炉で550℃/30分焼成して得た.
得られたチタニア薄膜の光触媒性を光触媒試験法で調べた.
すなわち,チタニア薄膜をメチレンブルー水溶液に浸漬して
ブラックライトを用いて紫外線を照射して調べた.
溶液のメチレンブルー残存率(%)を求めて光触媒性を評価した.
(iii)データが示していることを書く
・実験の目的と内容の概要を書く
チタニア薄膜の光触媒性を,
紫外線照射時に対するメチレンブルー残存率で調べた.
・データはどこにあるか
その結果を図に示す.
・データは何を示しているか
ガラス基板のみだとメチレンブルーは減少しない.
それに対して,チタニア薄膜Aも比較試料も色素は減少した.
すなわち,チタニア薄膜Aおよび比較試料の120分後の色素残存率は,
それぞれ70%および76%であり,
チタニア薄膜Aの色素残存率は対応する比較試料のそれより少し低い.
・わかったことを書く
ガラス基板のみだとメチレンブルーは減少しないから,
色素は紫外線照射のみでは分解しない.
それに対して,チタニア薄膜Aも比較試料も色素は減少しているから,
チタニアが光照射により活性化され,色素を分解したことがわかった.
・エビデンスを示して議論する
本研究の新規水溶液プロセスで得られたチタニアゾルAの結晶構造は,
XRD解析によりアナターゼ型結晶と同定された.
ゾルの段階でアナターゼ型結晶が作製できる研究例は見つからないから,
水溶液プロセスで結晶化されたゾルが作製できることは新発見である2).
紫外線照射されたチタニア薄膜Aもアナターゼと同定された.
さらに,チタニア薄膜Aの結晶性はゲル膜Aのそれより良好であり,
比較試料のそれよりもやや良好であることもわかった.
文献3) によれば,アナターゼ型結晶のチタニアは紫外線により活性化され,
その表面の有機物を分解する.
本研究においてもアナターゼ型チタニアは紫外線により活性化されることがわかった.
本研究のチタニア薄膜Aの光触媒性は比較試料のそれよりやや優れていると判断される.
上述のとおりチタニア薄膜Aの結晶性は比較試料のそれよりやや良好であり,
結晶性の良好な試料はより光触媒性が良好であることがわかった.
これは文献3)からも支持される.
・結論を書く
本研究で作製されたチタニア薄膜Aは,
従来の焼成によるチタニア薄膜のそれよりやや良好な光触媒性を示すことがわかった.
今後,実用化研究にステージを上げる.
また,この成果は新発見であり特許出願を検討する.
「結論または概要」に結論が書かれているなら,本文では結論を省略できます.
文献
1) 佐藤達彦,坪井翔,研究報告集,52 (2017) 21-30.
2) A. E. Danks, S. R. Hall and Z. Schnepp, Mater. Horiz., 2016, 3, 91-112.
3) K. Nakata and A. Fujishima. J. Photochem. Photobiol. C: Photochem. Rev., 13 (2012) 169–189.
⑤図表を載せる
最も重要なデータを図または表にまとめ,
それを報告書(概報)の右下に載せます.図表は1~2個とします.
以上の内容を,報告書(概報)のテンプレートに書きます.
その例を以下に示します.
上で記したことと概報に書いたことには異なるところがあります.
これは少ないスペースで言いたいことをもれなく書く工夫ですし,より簡潔に書く方法です.
5.まとめ
1)企業の研究報告書の特徴は以下のとおりです.
(i)正確・明晰・簡潔である.
(ii)主題(研究目的)と結論が対応しており結論が明確である.
(iii)上司が適切な判断をすみやかに下せる内容である.
(iv)特許に言及してある.
2)研究報告書は定型文書になっていることが多いです.その体裁に合わせて書きます.
3)報告書を書く前に行うことは以下のとおりです.
(i)研究目的を確認します.
(ii)データを表,図に「見える化」し,データの解析を確認します.
(iii)関連する社内報告書,論文や特許など既知の知識を確認します.
4)報告書は指定されたテンプレートに書きます.報告書(概報)を書くポイントは以下のとおりです.
(i)題名は主題(トピックス)と目的を盛り込みます.
(ii)結論または概要を指定された枠内に簡潔に書きます.
(iii)本文には,研究目的,実験,データが示していることを書きます.
このとき,データとエビデンスを示して考察します.
結論が「結論または概要」に書かれているなら,本文では省いてよいです.
(iv)重要なデータを図または表で示します.
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この一冊で研究報告書のテクニカルライティングが学べます。
- ・研究報告書の構成,体裁と内容について
- ・結果と考察の構造,重要な4要素,結果と考察の論理展開について
- ・結果と考察の書き方について
- ・報告書の表題,緒言(背景と目的),結論、実験などについて
- ・文の推敲に係り受け解析を使う方法について