若い技術者に科学理系文(理系文)をうまく書けない人が多いです.
上司は若者の文章力が落ちたと嘆くだけで指導しません.
若い技術者は努力しているが,自分でもうまく書けているとは思っていません.
だけど,どうすればよいのかよくわかりません.
両者の見解はかみ合っていません.
どうしてなのでしょうか?
それは理系文を書くこと,
つまりテクニカルライティングについて
5つの誤解があるからです.
その誤解を解かないといつまで経っても,
技術者の文章力は向上しません.
目次
1.5つの誤解
1)誤解その1 日本人だから日本語の理系文は書けるだろう
日本人なんだから生まれた時から日本語で生活しているし,
理系文も日本語だから容易に書けるだろう.
2)誤解その2 ビジネス文書作成の研修をしているから,理系文は書けるだろう
会社ではビジネス文書は大事だから,
その書き方の研修をしている.
だから理系文も書けるだろう.
3)誤解その3 理工系の大学教育を受けたのだから,理系文は書けるだろう
技術者は理工系の大学教育を受けている.
修士や博士もいる.
高度な教育を受けているのだから,理系文は書けるだろう.
4)誤解その4 マニュアルと見本を与えれば,理系文は書けるだろう
理系文の書き方マニュアルは整備してある.
社内には理系文の見本があちこちにある.
マニュアルを見て見本と見比べれば,理系文は書けるだろう.
5)誤解その5 習うより慣れろだ!ひたすら頑張れ
文章を書くのを教えるよりも,取りあえず書けばよい.
習うより慣れろだ.頑張ればそのうち書けるようになる.
2.真実
上の誤解を真に理解するには,
科学技術文(理系文)の特徴を理解し,
それが私たちの日常の考え方やものごとの捉え方と
異なっていることを認識する必要があります.
実はその認識こそが理系文を困難なく書くための第一歩です.
科学技術文(理系文)は,科学技術の成果や科学技術に関することが,
論理的にわかりやすく書かれた文章です.
それは科学技術の知識と法則に従い,論理的であり,
理系文として適切な体裁でわかりやすい日本語文でなければなりません.
理系文を書く方法がテクニカルライティングです.
つまり,科学技術に関する文章を,
論理的にわかりやすく,日本語で書く方法です.
テクニカルライティングを身に付ければ,
理系文は困難なく書くことができます.
テクニカルライティングをマスターする第一歩は,
理系文が日常の日本語文とは異なることを認識することです.
つまり,理系文は,特有の文章構造を持っていることと,
論理的に構成されていることを認識するのです.
この2つは私たちの日常のものごとの捉え方や文章の書き方とは異なります.
たとえば,前者だと,データとエビデンス(根拠,証拠)に基づいて
記述されることや論証のプロセスを一つひとつ記述することです.
後者だと,大事なことを最初に述べること,
言葉を省略しないことやできるだけ断定表現をすることです.
だから,理系文を困難なく書くためには,
私たちの国語教育と日常の文章作成法から離れるのです.
しかし,このことを多くの人が完全に理解しているとは言いがたいです.
確かに,私たちは小中高校の学校教育で,
作文や小論文の書き方を教わります.
しかし,それは理系文の構造と書き方とは遠いものです.
それだけでは理系文は書けないのです.
理工系の大学・大学院では,
多くの科学技術の知識とその体系を学びます.
また,卒業研究や大学院では論文を書きます.
指導教員から論文を書く方法や添削されて,論文を仕上げます.
その過程で論文執筆の方法を指導されます.
しかし,理系文の論理的な構成や日常文との相違について,
体系的な教育を受けているのではありませんから,
書く能力はまだまだ不十分なのが実情です.
以上のことを多くの人が理解していないのが,
上の5つの誤解を生み出しているのです.
3.テクニカルライティングを学ぶ方法
では,どうすれば理系文をうまく書けるようになるでしょうか.
それには以下のプロセスで学ぶことを薦めます.
①理系文の文章構造を学ぶ
②理系文を書くプロセスを習得する
③理系文の論理構造を学ぶ
これらを体系的に学び,書く練習をします.
テクニカルライティングの根底には以下のことがあります.
②科学的思考法は,日本人の日常的思考法とは異なります
科学的思考法を理解し,習得して使いこなすことが難しいのです.
思考モードと書き方を,日常モードから科学的モードに変えると,
それはできます.この切り替えがスムーズにできるようになれば,
テクニカルライティングを習得できます.
ここがミソなのです.
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この一冊で研究報告書のテクニカルライティングが学べます。
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- ・結果と考察の書き方について
- ・報告書の表題,緒言(背景と目的),結論、実験などについて
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