目次
1.はじめに―理解できない技術レポート,提案書―
テクニカルライティングで要求されることは,
論理的でわかりやすい科学技術文を書くことです.
そのためには,論理的な文章,
つまり体裁が整い筋道が通った文章を書かねばなりません.
ところが,よくよく読んでも理解できない技術レポートや提案書が多くあります.
それらが理解できないのは,
①論理的な構成を持っていても,難解で理解困難な文章
(理解困難文),
または
②体裁が整っていないか,筋道が通っていない文章
(非論理文),だからです.
これらの多くは一定の方法で改訂することにより,
わかりやすい論理文に作りかえることができます.
ここでは,非論理文を取り上げ,それがどのようなものかを説明し,
ついでその改訂方法を述べます.
2.非論理文とその改訂法
1)非論理文とは
非論理文とは論理的に書かれていない文章で,具体的には,
①体裁が整っていない文章,
②筋道が通っていない文章,
です.
体裁が整っていない文章は,
(i)主題―展開―結論の構造を持たないもの,
または
(ii)主題=結論―展開の構造を持たないものです.
筋道が通っていない文章は,
書かれている内容が論理的に展開されていない文章です.
書き手であるあなたが,文章の内容を論理的に考えていなければ,
どんなに体裁を整えても,どのように書くテクニックを駆使しても,
筋道の通った文章にはなりません.
だから,論理的でわかりやすい文章を書くには,
(i)論理文の体裁を学び,
(ii)論理的に考えることを学んで,
(iii)書く技術を磨くことです.
そのためには,このブログの記事をご覧ください.
また,拙著(「理系のための文章術入門」化学同人)もお役に立つと思います.
2)非論理文を論理文に改訂する方法
とはいえ,最初から論理的な文章がうまく書けるものでもありません.
どうしても非論理文を書いてしまいます.
ならば,非論理文を論理文に改訂する方法を身につけることも重要です.
以下に述べるように,非論理文は5種類に分類でき,
4種類までは論理文に改訂する方法があります.
自分はどのようなタイプの非論理文を書くかを理解できれば,
それにふさわしい改訂方法がわかります.
3.非論理文のタイプ
非論理文は以下の5種類に分けられます.
それぞれについて説明し,文例を示します.
次にその改訂方法と改訂例を述べます.
1)ジャンプ文
2)あいまい文
3)支離滅裂文
4)第三者的批判文
5)情緒文
4.非論理文の種類,文例および改訂例
1)ジャンプ文
ジャンプ文とは,事実やデータのみを述べて,考察を行わず,
いきなり結論にジャンプする文章です.
このような文章だと唐突に結論が出てきます.
結論に至る論理的な道筋が示されないからです.
また,主題と結論が対応しないことも多いです.
化合物AのFT-IRスペクトルによる構造同定
材料MとTから化学反応XYによって化合物Aを合成した.
その構造をFT-IRスペクトルを測定して調べた.
試料のFT-IRスペクトルデータを表にまとめた.
この化合物のFT-IRスペクトルには,
1900cm-1および1680cm-1に大きな吸収が観測された.
したがって,化合物Aの構造は,構造αβであると考えられる.
この文章の主題は,化合物AのFT-IRスペクトルによる構造同定で,
表題にもなっています.
結論は同定された構造になります.
確かにこの文章は主題を最初に述べて,
FT-IRスペクトルデータも表で提示されており,
最後に構造が同定されており,体裁は整っています.
しかし,この文章はデータの提示から突然結論にジャンプしています.
データをエビデンス(証拠,根拠)に基づいて,
どのように解釈して結論に到達したのか,その道筋を述べていません.
読み手はデータから結論への論理を理解できませんし,
結論が信頼できるものか判断できません.
これでは読み手に納得してもらうことはできません.
このようなジャンプ文は,
データから結論に至るまでの道筋をエビデンスに基づいて説明すると,
論理文に変えられます.
化合物AのFT-IRスペクトルによる構造同定
材料MとTから化学反応XYによって化合物Aを合成した.
その構造をFT-IRスペクトルを測定して調べた.
試料のFT-IRスペクトルデータを表にまとめた.
この化合物のFT-IRスペクトルには,1900cm-1および1680cm-1に大きな吸収が観測された.
Tosakiは,構造αβを持つ化合物のFT-IRスペクトルは1900cm-1および1680cm-1に大きな吸収を示すことを報告している1).
化合物AのFT-IRスペクトルには,1900cm-1および1680cm-1に大きな吸収が観測される.Tosakiによると,
これは構造αβに対応している.
したがって,化合物Aの構造は,構造αβであると考えられる.
文献
1) A. Tosaki, Journal of Spectroscopy, 123, 10-15 (2015).
論理的に改訂されました.実験データを提示し,
データとその帰属に関する文献を引用しています.
これをエビデンス(根拠)として化合物Aの構造が構造αβであると同定されます.
データを提示しエビデンスを用いて考察して結論を導き出します.
論理的文章になります.
もう1つ例を出しましょう.
地球温暖化とその対策
地球温暖化は,ここ100年で起こっている地球規模での気温や海面水温の上昇である.
最近大型台風が多く上陸し,洪水や土砂崩れなど災害も多く発生している.
灼熱の夏と極寒の冬も異常気象の一つだろう.
地球温暖化をくい止めるためには,
省エネルギー型や二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを用いた産業システムを構築し,
私たちも化石燃料に依存しない生活習慣を創り上げるべきである.
すなわち,温室効果ガスを削減できる産業システムと生活習慣を構築すべきである.
この文章は主題の説明は書かれており,
地球温暖化の状況も少しは説明されていますが,
それを示すデータと温暖化対策を考えるためのデータやエビデンス(根拠)が示されていません.
いきなり結論を持ち出されても,読み手はその意味を理解できません.
この文章は,上の文例と同様に,
地球温暖化のデータとエビデンスに基づく考察を示すことにより,
論理文に改訂できます.
地球温暖化とその対策
地球温暖化は,ここ100年で起こっている地球規模での気温や海面水温の上昇である.
最近大型台風が多く上陸し,洪水や土砂崩れなど災害も多く発生している.
灼熱の夏と極寒の冬も異常気象の一つだろう.
地球が温暖化していることは,世界の気温変化を見るとわかる.
世界の年平均気温(陸地)の1880年から2017年までの変化1)と,
世界の年平均海面水温の1890年から2017年までの変化2)を,
それぞれ図1および図2に示す.
これらの図に示すように1880年以降現在まで,
一時的な低下はあるものの陸地も海面も温度は上昇し続けている.
長期的にはここ100年で陸地は0.91℃,海面は0.54℃上昇している.
温暖化の要因は,二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量が増えていることによる,
と考えられている.
図3に西暦0年から2011年までの二酸化炭素の大気中濃度変化を示す3).
大気中の二酸化炭素は1880年ごろから急激に上昇していることがわかる.
図1~3は,二酸化炭素の濃度増加と気温・海面水温の上昇がよく対応していることを示している.
産業革命以降の化石燃料を大量消費する工業生産と私たちの日常生活により,
二酸化炭素などの温室効果ガスが大量に大気中へ廃棄された.
このガスは地表面からの熱を吸収し,その熱を再び地表へ放出する(温室効果).
温室効果により大気温度も海面温度も上昇するのである.
温室効果ガスの中でも二酸化炭素の排出量が最も多いので,
その影響は顕著と考えられる.
したがって,地球温暖化をくい止めるためには,
二酸化炭素の排出を低減させることである.
そのためには,
省エネルギー型や二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを用いた産業システムを構築し,
私たちも化石燃料に依存しない生活習慣を創り上げるべきである.
すなわち,温室効果ガスを削減できる産業システムと生活習慣を構築すべきである.
文献
1) 気象庁HP http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/land/land_an_wld.html
2) 気象庁HP https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/shindan/a_1/glb_warm/glb_warm.html
3) 気象庁HP http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/chishiki_ondanka/p06.html
論理的に改訂されました.
地球温暖化に関するデータ(陸地の気温変化,海面水温の変化)を提示し,
その要因と考えられている二酸化炭素のデータをエビデンスとして提示され,
これらの関係を考察しています.
データがグラフとして示されており,これらの関係が理解しやすくなっています.
論理的で納得できる文章になります.
2)あいまい文
あいまいな表現で何を言いたいのか不明な文章です.
書き手の意図としては,あいまいにしておいて意見を明確に示さないで,
読み手に察してもらおうとしているのかもしれません.
だが,このような文章は理系文ではありません.
理系文は書き手の主張が明確に述べられた文章だからです.
10月度研究報告 デバイスXYの改良研究
デバイスXYの物性αの改良研究を行っている.
今月度はデバイスの表面処理法を検討した.
処理M法でデバイスの表面処理を行った.M法は,
デバイスの表面を撥水剤STで撥水化する方法である.
さらに新たな処理法(P法)も検討した.
この方法は,デバイス表面に撥水剤RQを含むハードコート膜を塗布し硬化するものである.
改良効果が表れたと考えてもよいだろう.
この文例の問題点は以下のとおりです.
物性αの改良に関する目標スペック,開発期間が明示されていないので,
目標に対する10月度当初の現状と月度の進捗度が理解できません.
10月度の研究でどの程度改良されたのか,データが示されていないので,理解できません.
今後の方針が書かれていません.
研究者(担当者)としては,判断を読み手(上司)に仰ぎたいのかもしれません.
でも,その前に自分の主張を明確に述べないと上司は判断してくれません.
これらのことから,この研究をこの担当者に任せてよいのか,
上司(読み手)は考え込んでしまいます.
最初と2番目の項目は研究内容に関わるもので,
研究者(担当者)が理系文の書き方をマスターしていれば問題なく書けるものです.
しかし,3番目と最後の項目は困ったことになりそうです.
上司(読み手)はこのようなレポートを書く担当者の研究遂行能力に疑問を持っています.
このようなレポートを書き続けると,担当者を変えると上司は判断する可能性があります.
論理文に改訂するには,スペックやデータなど必要事項を示し,
それに対する書き手(担当者)の考察を書いて主張を明確に述べます.ついで,今後の方針を記します.
ここで注意です.
主張や今後の方針は,正解か否かが問われているのではありません.
データに基づいた書き手の判断を述べるのです.
上司と議論して間違っていれば修正すればよいのです.
自分の考えを述べて議論することが大事なのです.
それが理系の議論なのです.
10月度研究報告 デバイスXYの改良研究
デバイスXYの物性αの改良研究を行っている.
目標スペックは,現行品の性能100に対して150(50 %向上)であり,開発期限は来年3月末である.
今月度はデバイスの表面処理法を検討した.
まず,処理M法でデバイス表面の撥水化処理を行った.
すなわち,デバイス表面に,撥水剤STの5wt%水溶液に試料を25℃/15分浸漬して,表面を撥水化した.
その結果,物性αは120となり,20%改良された.
しかし,まだスペック未達である.
そこで,新たな処理法P法を検討した.
すなわち,ハードコート剤KLの5wt%エタノール溶液100gに,撥水剤RQの2wt%エタノール溶液を10g添加し,
この混合溶液をデバイスに塗布後,130℃で30分加熱して,撥水剤を含むハードコート膜を形成した.
その結果,物性αは135となり改良された.
今後P法の最適化を行うことにより,スペックを達成できると考えられる.
上の解説で述べた問題点がすべて解消されて,スペックやデータなどが示されて,
書き手の行った実験とその結果が明確に伝わりました.
上司は信頼して書き手にこの研究を継続させるし,励ますでしょう.
3)支離滅裂文
支離滅裂文は,記述内容があちこちに飛び,焦点が定まらず,
書き手は何を主張したいのか不明の文です.
多くのことが一見つながるように書かれていますが,
それらは論理がつながらないので読み手は理解できません.
地球温暖化に対してわれわれのできること
地球規模で気温や海面水温が上昇している.
大型台風の襲来,局地的な集中豪雨などの異常気象も頻発している.地球はどうなっていくのだろう.
最近季節感がズレて,桜が咲く前に暑くなったり,梅雨明けが異常にはやくなったりしている.
われわれの生活感覚が昔とは一変してしまったのだ.地球温暖化に対してどうすればよいのだろうか.
温暖化の要因は炭酸ガスの濃度が増えていることによる.
大気は酸素と窒素がほとんどで炭酸ガスは少量だが,
気温を変えているのだそうだ.われわれはどのくらい炭酸ガスを排出しているのだろうか.
気象庁のホームページにあるデータを見ると,
炭酸ガスの大気中濃度は20世紀に入って増加している.
知らなかったがそうなんだ.そのせいか,確かに,世界の平均気温は上昇している.
同じく気象庁のデータによると,大気温度と海面水温は上昇している.
夏も春も秋も暑いはずだ.
世界の大気の平均気温は,ここ100年で約0.9℃上昇し,海面水温も100年間で海面水温は,約0.5℃上昇している.
われわれは大量生産&大量消費という生活態度を改めるべきである.
昔のように,季節の移り変わりにあわせた生活をすべきである.
ホタルを追いかけた初夏の夜,縁台で夕涼みをした夏の夜,
火鉢に家族が寄り添った冬の夕べ,そのような生活を取り戻すことにより,家族の絆も強くなり,
個人がバラバラで勝手気ままなことを言っているわれわれ日本人の現状も改まるだろう.
この文は地球温暖化の現状,要因と対策が書かれているようです.
でも,話があちこちに飛び,論点がずれています.
書き手は現状,要因および対策についてどのように考えているのか,
それを読み手は多くの言葉の中から「発見」しなければなりません.
読み手にこのような労苦を強いても,それが本当に書き手の主張なのか,よくわかりません.
支離滅裂文は,書き手にインタビューして本当に主張したいことを聞き出さないと改訂できません.
自分が書いた文章なら,読み手からインタビューされているつもりで,
自分の本当に言いたいことを考えます.
それに絞ると論理文に改訂できます.
書き手の主張は,地球温暖化は炭酸ガスの大量排出による,
われわれは省エネルギーの生活を目指すべきである,として以下に改訂します.
地球温暖化に対してわれわれのできること
地球規模で気温や海面水温が上昇しており,地球温暖化が進んでいる.
大型台風の襲来,局地的な集中豪雨などの異常気象の頻発はその例である.
そのため,われわれの日常生活では,季節感がズレて,
桜が咲く前に暑くなったり,梅雨明けが異常にはやくなったりしているのだ.
地球温暖化に対して,われわれはどうすればよいのだろうか.
そのためには地球温暖化の要因を知らねばならない.
気象庁のホームページにあるデータを見ると,炭酸ガスの大気中濃度は20世紀に入って増加している.
それに対応して,ここ100年で,世界の大気の平均気温は約0.9℃上昇し,海面水温も約0.5℃上昇している.
温暖化の要因は大気中の炭酸ガス濃度の増加であることがわかる.
なぜ大気中の炭酸ガスは増加したのか.
それはわれわれの産業活動と日常生活で化石燃料を大量消費していることによる.
その活動が大気中に大量の炭酸ガスを放出させたのだ.
なので,われわれは大量生産&大量消費という生活態度を改め,
省エネルギーで生活することを心がけるべきである.
提案したい.
大量消費を止め中古品も含めたシェア経済を構築しよう,と.
日常生活は季節の移り変わりにあわせた生活に戻り,
季節を楽しむ生活に変えよう,と.そうすれば,
地球温暖化をくい止める一助となると信じる.
パラグラフの基本構成(主題―展開―結論,主題=結論―展開)を守り,
主題と結論で書き手の主張を明快にしました.
また,横道にそれた文を削除しました.このように改訂すれば,
支離滅裂文も論理文になります.
4)第三者的批判文
第三者的批判文は,論理的な体裁を持っており,客観的な装いの文です.
しかし,書き手の主張が書かれておらず,何を伝えたいのかわかりません.
この文は,「・・・の解決が待たれる」,「・・・に注目したい」,「・・・に期待したい」などの言葉で終わることが多いです.
地球温暖化について考える
地球温暖化は,前世紀から起こっている地球規模での気温の上昇であり,
異常気象の頻発を伴う.
多くの大型台風の発生,異常な豪雨とそれによる洪水や土砂崩れなど災害も多く発生している.
地球温暖化の現状は,世界の気温変化から明確に読み取れる.
気象庁のホームページによると,世界の年平均気温(陸地)はここ100年で0.91℃上昇し1),
世界の年平均海面水温は0.54℃上昇している2).
温暖化の要因は,二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量が増えていることによる,
と考えられている.
事実,二酸化炭素の大気中濃度と気温の上昇はよく対応しており,
気温の上昇と同時期から大気中の二酸化炭素濃度が増加しているのだ3).
地球温暖化をくい止めるためには,二酸化炭素の排出を低減させることである.
今後の世界的取り組みが進展することに期待したい.
文献
1) 気象庁HP http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/land/land_an_wld.html
2) 気象庁HP https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/shindan/a_1/glb_warm/glb_warm.html
3) 気象庁HP http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/chishiki_ondanka/p06.html
この文の書き手は,地球温暖化について一見論理的で合理的なことを述べているように装っています.
客観的なデータを文献を引用して述べています.
しかし,書き手の主張はどきにも現れません.
書き手にとって地球温暖化は自分の問題ではなく,
地球から遠く離れた場所から,高みの見物をしているようです.
「今後の世界的取り組みが進展することに期待したい」とは,
何も言っていないことと同義です.
このような文章では何も伝えられません.
第三者的批判文を改訂するときは,書き手と話し合って,
書き手の主張を聞かないとできません.
書かれた文章にはそれが顔を出していないからです.
自分が書いた文章なら,この問題について「どのように考えているのか」,
「どうしたいのか」を自分自身に問いかけます.
その結果をデータとエビデンスを使って書きます.
それが書き手の主張です.
ここでは割愛します.
5)情緒文
情緒文は,心に思うことがそのまま書かれている文です.
文章の主題や結論がわかりませんし,パラグラフも主題・結論がどこにあるか不明です.
しばしば,「みんな仲良くしましょう」というような結論めいた文で締めくくられます.
この文の特徴は,誰もが何となく同意できそうな情緒的言葉が連なっていることです.
結論も情緒的な言葉で書かれますので,
なんとなくそんな気にさせられるかもしれませんが,
書き手が具体的に何を主張したいのかわかりません.
地球温暖化に思うこと
最近夏が異常に暑いと感じる.
そういえば,冬もものすごく寒かったり,はたまた暖かかったりして,
季節感がなくなったように感じる.
これが地球温暖化の影響なのだろうか.
地球温暖化は,炭酸ガスがとてもたくさん大気に出ているからだと聞く.
確かにスーパーに買い物に行くときはクルマで行くし,
夏の暑い日はクーラーのお世話になっている.
このようにして多くの炭酸ガスを出しているのだろう.
知り合いの外国人に,日本人はもっと意識を高くすべきと言われ,
返す言葉がなかった.
これから日本はどうなるのだろう.心配である.
夏の暑さや冬の寒さなど気候について思うことが書かれています.
炭酸ガスについても述べられていますが,
書き手は地球温暖化に対してどうしたいのか,よくわかりません.
外国人の発言を引用したのは権威付けなのでしょうか.
この文は現状に対する感慨を述べたものですから,
その感興を共に感じることはできます.
このような情緒文は,論理文とは別のジャンルに属しますので,改訂する必要はないでしょう.
論理文に改訂するときは,書き手の主張をよく聞かないとできません.
ここでは割愛します.
5.まとめ
テクニカルライティングは,論理的でわかりやすい科学技術文を書くことです.
ところが,理解できない技術レポートや提案書が多く書かれています.
その中でも論理的でない文章,つまり非論理文が散見されます.
非論理文は,
①体裁が整っていない文章,
②筋道が通っていない文章,
です.
非論理文は以下の5種類に分類でき,
そのうち4種類までは論理文に改訂する方法があります.
自分はどのようなタイプの非論理文を書くかを理解できれば,
それにふさわしい改訂方法がわかります.
①ジャンプ文
②あいまい文
③支離滅裂文
④第三者的批判文
⑤情緒文
①ジャンプ文
ジャンプ文は,事実やデータの提示から突然結論にジャンプすることが特徴です.
このような文章は,データから結論に至るまでの道筋をエビデンスに基づいて説明すると,
論理文に変えられます.
②あいまい文
あいまい文は,あいまいな表現で何を言いたいのか不明な文章です.
あいまい文は,データを示し,それに対する書き手の主張を明確に述べると,
論理文に改訂できます.
自分の意見・判断を述べること,およびそれについて関係者と議論すること,
理系人と理系文にとって大事です.
理系ではそれが求められているからです.間違っていれば修正すればよいのです.
③支離滅裂文
支離滅裂文は,記述内容があちこちに飛び,焦点が定まらず,
書き手は何を主張したいのか不明です.
支離滅裂文は,書き手にインタビューして本当に主張したいことを聞き出します.
自分が書いた文章なら,読み手からインタビューされているつもりで,
自分の本当に言いたいことを考えます.
それに絞ると論理文に改訂できます.
④第三者的批判文
第三者的批判文は,論理的な体裁を持っており,客観的な装いの文です.
しかし,書き手の主張が書かれておらず,何を伝えたいのかわかりません.
この文は,「・・・の解決が待たれる」,「・・・に注目したい」,「・・・に期待したい」などの言葉で終わることが多いです.
この文章は,書き手と話し合って,その主張をよく聞かないと改訂できません.
自分が書いた文章なら,文章が取り上げていることを自分自身に問いかけ,
考えついたことをデータとエビデンスを使って書きます.それが書き手の主張です.
⑤情緒文
情緒文は,心に思うことがそのまま書かれている文です.
文章の主題や結論がわかりませんし,パラグラフも主題・結論がどこにあるか不明です.
この文の特徴は,誰もが何となく同意できそうな情緒的言葉が連なっていることです.
この文は書き手の感慨を述べたものですから,論理文とは異なるジャンルの文章です.
なので,論理文に改訂する必要はないでしょう.
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- ・結果と考察の書き方について
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- ・文の推敲に係り受け解析を使う方法について