目次
1 わかりやすい科学技術文の要件
科学技術文は,私たちが日常生活で使っている
通常の日本語文と少し違い,
独特の構造を持っています.
慣れないと少し違和感を抱くかもしれません.
それが科学技術をうまく書けない
理由の一つでもあります.
では,わかりやすい科学技術文とは,
どんなものでしょうか?
それは,科学技術文として適切な構造を持っており,
その分野の科学技術者が読んでスーッと
理解できる文章です.
それは,以下の特徴を持つ文章です.
(1)理路整然とした論理構成を持つ
科学技術文は論理的に構成されています.
科学技術文はカチッとした論理で
できていますから,固い印象を受けるかもしれません.
でも,理路整然とした論理で構成された文章は,
読みやすく理解しやすい科学技術文です.
ここでいう論理はいわゆる科学の論理です.
それについては,このあとで何度も述べるでしょう.
(2)科学技術文に特徴的な文章構成である
科学技術文は特徴的な文章構成を持ちます.
まず,重要なこと(主題や結論)を最初に置きます.
その後,主題や結論についての説明,
概念や言葉の定義や書き手の言いたいことの
エビデンス(証拠・根拠)を述べます.
この構成は,通常の日本語文とは異なります.
慣れれば科学技術文の方がわかりやすいのです.
(3)適切な用語と表現方法を使う
科学技術文では,
標準的な科学技術用語を使います.
また,書き手やその業界に特有の
言葉(業界用語)も使われることもあります.
また,科学技術文として適切な
表現方法(言い回し)もあります.
適切な用語と表現方法を使うと,
わかりやすい科学技術文になります.
この要件が整った文章を読むと,
科学技術者は「わかりやすい文章だ」と言うのです.
2 体系的に学ぼう
上の要件を体系的に学ぶと,
科学技術文作成の達人になれます.
では,どのようにして学ぶのか,です.
上の(1)は科学の論理です.
科学の論理を理解して,
それを使って考えられるようになるのです.
つまり,論理的思考法を身に付けることなのです.
(2)と(3)は,科学技術文の構成です.
筆者は,それを拙著
“理系のための文章術入門”
(化学同人,2015年)に,
理系文法として体系化してまとめました.
それは以下のとおりです.
②文の構造
③文の表現方法
④パラグラフの構成・構造・表現法
⑤文章の構成・構造
①文の要素は,日本語文の要素は,
単語・文節・語句からなるというものです.
②文の構造は文型です.
筆者は日本語文における文型を7つ提案しました.
英語を学ぶとすぐ英語の5文型を教わるでしょう.
5文型は英語の標準的な言い方です.
しかし,日本語文の場合は,文型というものは
日本語文法の本には見当たりません.
つまり標準的な言い方がないのです.
これでは科学技術文を書くとき不便です.
だから,筆者は科学技術文を調べて,
7つの文型で科学技術文が
書かれていることを見つけました.
そこで,科学技術文における7文型を
提唱したのです.
③文の表現方法では,
特に科学技術文特有の表現法(言い回し)を,
8種類の“典型的表現”にまとめました.
この表現法を定型文として用いるのです.
ちょっと極端な言い方になりますが,
典型文をつなげていけば,科学技術文を書けます.
④パラグラフの構成・構造・表現法は,
科学技術文では最も重要だと言っても
過言ではありません.
それほど,パラグラフをどのようにして
書くのかは大事なのです.
パラグラフを分かりやすく書けば,
わかりやすい科学技術文になります.
おもしろいことに国語の作文法や
小論文の書き方のガイドブックを読んでも,
パラグラフの書き方については,
あまり書かれていません.
しかし,パラグラフの書き方は,
なにも科学技術文に特有のことではなく,
通常の日本語文の描き方でも重要と
筆者は考えています.
⑤文章の構成・構造も
科学技術文にとっては重要です.
科学技術文全体の構成・構造は,
パラグラフのそれらを理解して
書き方をマスターすると,
理解できます.
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(※拙著では“科学技術文”を“理系文”と言っています.)
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拙著はこのように科学技術文の書き方を体
系的に解説しましたので,
前項の(2)と(3)は拙著に譲ります.
このブログでは,前項の
(1)理路整然とした論理構成を持つ
に集中しいます.
これ以降は,主に科学技術文で使われる
論理(科学の論理)と
それに関係することについて述べていきます.