わかりやすい科学技術文の
構造について,前回述べました.
科学技術文を別の視点から見ると,
それは書き手の言いたいことを,
“論理的”に“説明”する文章と言えます.
いきなりそう言われてもわかりにくいですね.
以下に説明しましょう.
目次
1.科学技術文は論理的に説明した文章です
例をあげましょう.
企業や研究機関に勤務する科学技術者は,
ある目的を持って研究開発を行います.
研究開発では実験・観察などを行い,
結果を報告書にまとめます.
報告書は,実験結果などについて,データを示して,
その意味や判断を論理的に説明した文章です.
この報告書をこれから“実験報告書”と言います.
ある事項を解説することもあります.
それは,ある事項について説明した文章です.
何かの調査を行えば,調査内容を説明した
調査報告書を書きます.
会議後の報告書は,
決定されたことを説明し報告するものです.
これらすべてが科学技術文です.
それは,実験などの業務を行った人(書き手)が,
行ったこと(実験結果など)を,
論理的に説明した文章なのです.
ほとんどの場合,報告する相手は決まっており,
企業や研究機関だと上司でしょう.
大事なことは,報告を受ける人(読み手)にとって,
わかりやすい文章であることです.
読み手が短時間でスーッと理解できる文章ですし,
大げさに言えば斜め読みでもわかってもらえる文章です.
読み手は多くの場合,科学技術者ですし
報告者(書き手)よりもベテランです.
だから,論理的に説明された文章だと,
内容がスーッと頭に入っていきます.
そのような文章をわかりやすいと言うのですし,
好むのです.
理工系の大学や大学院でも同様です.
学生は,授業や研究で実験結果をまとめたレポートや
論文を書くでしょう.
実験結果を正確に書き,データを示して,
わかったことを論理的に説明しないと,
先生は納得しないでしょう.
2.わかりやすい科学技術文を書くスキルを身につける
論理的に説明する方法が重要なのです.
それを身につけることが,
わかりやすい科学技術文を書くスキルになるのです.
3.科学技術文は3タイプ
科学技術文を,論理的な説明の方法という
観点から分けると,以下の3つになります.
①実験・観察などの結果を報告する(実験報告書 ”結果と考察”が重要)
多くの科学技術文はこのタイプでしょう.
この文章で重要なのは,実験・観察結果を述べて
それについて考察する部分,
つまり“結果と考察”です.
実験・観察事実が正確に書かれ,
エビデンス(根拠・証拠)に基づく論理的な説明を,
わかりやすいと言うのです.
このように書かれていないと,読み手(上司や先生)は,
「わかりにくい」と言います.
しかし,わかりやすい“結果と考察”を書くことは,
実は意外に難しいのです.
多くの科学技術者や学生の頭を日々悩ませているのです.
②ある事項の解説や調査結果を報告する(解説文)
ある事項を解説する解説文や,
調査結果を報告する調査報告書です.
必要なデータが盛り込まれ,
論理的な解説や説明がなされた文章を,
わかりやすいというのです.
これも難しいのです.
③新企画を提案する(提案文)
新しい企画を提案する文章です.
初心者は手がけることは少ないかもしれませんが,
ある程度経験を積むと,研究テーマを提案したり,
新しい企画を提案するでしょう.
論理的で説得力のある文章だと,アピール力があり,
「なるほどやってみよう」と上司から好意的に
言ってもらえるでしょう.
科学技術者が日常多く書く文書は,
実験・観察などの実験報告書でしょう.
上で述べたように,
“結果と考察”を書くのは難しいです.
なので,次回から,実験報告書,その中でも特に
”結果と考察”の書き方について述べましょう.
4.まとめ
論理的に説明した文章です.
大事なことは,報告を受ける人(読み手)にとって,
それがわかりやすい文章であることです.
読み手は,論理的に説明された文章を
わかりやすいと言い,そのような文章を好むのです.
2)わかりやすい科学技術文を書くスキルを
身につけることが重要です.
3)科学技術文は3タイプ
①実験・観察などの結果を報告する
(実験報告書 ”結果と考察”が重要)
②ある事項の解説や調査結果を報告する
(解説文)
③新企画を提案する(提案文)
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