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論理的な科学技術文(理系文)の構造【テクニカルライティング】

1.科学技術文は論理的

科学技術文は論理的に書かれています.

それは筋道が通り,体裁が整った文章です.
そのような文章はわかりやすく納得できる文章でもあります.

なお,論理的な文章は「主題」「展開」および「結論」からなります.

「主題」はその文章で書き手が主張したいことの核心であり,
「展開」は主題の説明や例示など,書き手の主張が展開されており,
「結論」は書き手の主張をまとめたものです.

詳細は拙著(理系のための文章術入門)をご覧ください.

1)科学技術文は筋道の通った文章

科学技術文は筋道の通った文章です.
それは以下の要件を満たしているものです.

①主題と結論が対応しています

論理的な文章では,文章の主題に対応した結論が置かれます.

たとえば,「○○について主張したい」と主題で述べ,
「それは△△と結論づけられる」が結論になります.
ここで○○と△△は対応しています.

主題に対して関連が薄い結論や異なる結論では,
読み手は納得できません.

支離滅裂な文章だと思われます.

②「展開」は論理ツールを使って論理的に記述されています

「展開」は書き手が主張を具体的に述べるところです.

主張を説明したりデータや例を出したり,
エビデンス(後述します)に基づき考察します.

このプロセスは論理ツール①や②を使って論理的に書かれます.

そうすると,書き手の主張は論理的で明快になり,
読み手は書き手の主張をすなおに理解できます.
論理ツール①
論理ツール②

③「展開」にデータや例が示されています

観察・実験・シミュレーションデータは科学技術の基本要素です.

例を出すのも書き手の主張をわかりやすくしてくれます.

「展開」にそれらがあれば科学技術の基本にそっていますし,
記述がより具体的になります.

④「展開」にエビデンスに基づく考察(議論)がなされています

エビデンスは根拠や証拠です.

データや例を示して,エビデンスに基づいてデータの意味などを考察(議論)します.

そうすることによって,書き手の主張が根拠や証拠に基づくものであることを示し,
合理的であることを主張するのです.

ただし,データや例を示すのみで書き手の言いたいことが伝わるケースでは,
この考察がないケースもあります.

⑤科学の知識と法則に基づいています

科学技術文は,科学技術に関することが記述されています.
なので,科学の知識と法則に基づいているのは当然と言えば当然です.

⑥書き手の主張が明快に記述されています

データや例を示し,エビデンスに基づいて考察してあるので,
書き手の主張は,当然明快になります.

もし明快にならないのであれば,
それは「展開」の記述のどこかがほころびているのです.

多くのケースでは,論理ツールをうまく使っていなかったり,
エビデンスを明確に提示していないからです.

それを修正すればハッキリと理解できる結論が得られます.
明快な結論を科学技術以外の理由によってぼかすべきではありません.
職場などにおける種々の思惑は科学技術では排除すべきです.

ただし,結論が正解か否かと言っているのではありません.
それはもっとデータを積み重ねたり時間を経ないとわからないかもしれません.
そのときまで書き手の主張をしないのはフェアではありません.

得られたデータとそのとき持っているエビデンスで,
論理的に記述し明快な主張を提出することが,
科学技術者にとって大事なことです.

2)科学技術文は体裁の整った文章

科学技術文は体裁の整った文章です.それは次のとおりです.

①主題―展開―結論の構成を持ちます

文章の最初に「主題」を置き,
「展開」で主題についてデータや例を示し,
エビデンスに基づき考察し,「結論」で書き手の主張をまとめます.

②主題=結論―展開の構成を持ちます

上の構成と異なり,主題=結論で,
文章の最初に書き手の主張を簡潔にまとめます.

ついで,「結論」への論理プロセスを「展開」で述べます.

2.データとエビデンスは重要

科学技術文ではデータとエビデンスは重要です.

科学技術は観察・実験・シミュレーションのデータ(事実)に基づいています.
データがないと科学技術文とは言えないです.
また,データのかわりに例を示すこともあります.

エビデンスも重要です.
エビデンスは根拠または証拠です.

観察や実験などから得られたデータもエビデンスとして使いますし,
文献や特許情報,あるいは人から聞いた確かな情報もエビデンスとして使います.

3.論理的な科学技術文の例

以下に論理的な科学技術文例を示します.
例文の構成は以下のとおりです.

1)「主題」は第1パラグラフです.

2)「展開」は,第2,第3パラグラフです.

3)「結論」は,第4パラグラフです.

4)この例文では,「データ」は文献1)で「エビデンス」は文献2)です.
データとエビデンスもグラフで示し,引用元も「文献」として明記してあります.

表題:地球温暖化の経過と現状

地球温暖化は,近年の地球規模での気温や海水面温度の上昇である.
これには大型台風の襲来,局地的な集中豪雨など異常気象現象も伴っている.
気温上昇の経過,現状およびその要因を,気象庁が発表しているデータで調べよう.

世界の平均気温は上昇している.
世界の年平均気温の変化を図1に示す1).図は
1981〜2010年の30年平均値からの偏差を示し,
黒線は各年の平均気温の基準値からの偏差,
青線は偏差の5年移動平均,および赤線は長期的な変化傾向を示す.
世界の年平均気温は,短期的にはバラツキがあるが,
長期的には上昇しており,1900年から2000年の100年間で約0.7℃上昇している.
 
気温の変化は大気中の温暖化ガス,
特に二酸化炭素濃度の上昇と対応している.
図2に西暦0年から2011年までの世界の二酸化炭素濃度の変化を示す2).
19世紀末までは二酸化炭素濃度は約280 ppmでほぼ一定であったが,
それ以降上昇し2011年では約390 ppmになった.これらのデータを比較すると,
気温上昇と二酸化炭素濃度変化には正の相関性があると判断される.

以上より世界の気温はここ100年で約0.7℃上昇していることがわかった.
それは二酸化炭素濃度の上昇と相関性があると考えられる.

文献
1) 気象庁ホームページ http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_wld.html
2) 気象庁ホームページ http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/chishiki_ondanka/p06.html

論理文例 図解

4.まとめ

1)科学技術文は論理的に書かれています.
それは筋道が通り体裁が整った文章です.

①筋道の通った文章は以下の要件を満たしているものです.

・主題と結論が対応しています

・「展開」は論理ツールを使って論理的に記述されています

・「展開」にデータや例が示されています

・「展開」にエビデンスに基づく考察(議論)がなされています

・科学の知識と法則に基づいています

・書き手の主張が明快に記述されています



②体裁の整った文章は次のとおりです.

・主題―展開―結論の構成を持ちます

・主題=結論―展開の構成を持ちます



2)データとエビデンスは重要です.

科学技術文にはデータ(例示も含みます)と
エビデンス(根拠,証拠)が示されています.

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著書紹介
『理系のための文章術入門』

科学技術文の書き方を,易しく解説した入門書です.
本書の特徴は以下のとおりです.

①重要な部分をカラーにして強調したり,ポイントを枠で囲むなどして,ビジュアルな誌面とし,内容をつかみやすいようにしています.

②日本語の構成と特徴を述べ,次いで理系文の構成と特徴を,日本語文のそれと比較しながら述べ,両者の違いがわかるように配慮してあります.

③科学技術文の構成と特徴を「理系文法」として体系化したので,科学技術文の書き方を体系的に困難なく習得することができます.

④科学技術者が書くさまざまなスタイルの文章(レポート・卒論・企業報告書など)を示し,書き方を具体的に解説しました.

いろいろなスタイルの文章に慣れ,それらを書くスキルを身につけることができます.
本書で学ぶことにより,科学技術文書作成の達人になれます.
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