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論理的に考える―論理的に考えるとは―【テクニカルライティング】

1.テクニカルライティングに論理的思考は必須

科学技術文を,論理的にわかりやすく,
日本語で書く方法が,テクニカルライティングです.

科学技術文を論理的に書くには,論理的に考える力が必要です.

論理的思考力はテクニカルライティングにとって
基本であり重要なキーです.

単に書くテクニックを覚えるだけでは,
論理的で読み手が納得できる科学技術文を書くことはできません.

論理的思考力を身に付ければ,
そのようなテクニカルライティングがスムーズにできます.

それは見かけ上遠回りに見えます.
だが,“急げば回れ”の格言どおり,
最もはやくテクニカルライティングの達人になれる道です.

では論理的に考えるとはどういうことなのか,
について以下に述べます.
論理的に考えることを理解しましょう.

2.論理的に考えることは人の本性で易しいはず

論理的に考えることは,人の頭脳活動であり,
それは人の本性です.

論理的に考えることは人が進化の過程で獲得した能力であり,
人の遺伝子に組み込まれています.

だから,私たちは誰でも論理的に考える能力を
持っており,それは本来易しいはずです.

3.考えることは難しい

現実には論理的に考えることは大変難しいです.
なぜでしょうか.

それは,第一に,考えることは
多くのエネルギーを消費するからです.

人の脳は摂取したエネルギーの約25%を消費するといわれています.
人の脳はそれだけエネルギーを多く消費する器官です.

しかし,人の活動は省エネルギーがデフォルト(基準)です.

進化の過程において,人は長く食料を得ることが
困難な状況下で生きてきました.
飢餓がデフォルトだったのです.

それを反映して,
人の体は省エネルギーで生きるように進化しました.

ところが,脳は多エネルギー消費器官ですから,デフォルトに反します.

だから,考えて判断するという多エネルギー消費より,
直感という省エネルギーモードで判断するのが,
エネルギー節約という観点からは合理的です.

第二に,論理的に考えることは,
私たち日本人の日常の思考法とは異なるからです.

また,欧米人の日常の思考法とも異なっています.
だから,論理的に考えにくいのです.

事実,アメリカの数学者Rebecca Goldenは,
アメリカの大学卒業生の36%は論理的思考能力に欠けると報告しています.
https://www.wired.com/story/why-math-is-the-best-way-to-make-sense-of-the-world

では,論理的に考えるにはどうすればよいでしょうか.

それは,論理的に考えるための教育を受け,
練習問題を解き,現実問題で実践して,その能力を身に付けるのです.

そんな面倒なことを意欲的に行うには,
推進力(モチベーション)が必要です.

何かを達成したいとか,何かを探求したいとか,
お金が儲かるなどのモチベーションがないと,私たちは考える意欲を持ちません.

さらに,日本人の思考のクセから脱却することも重要です.
(論理的に考える―論理的思考の基本―「6.定義して抽象概念を使うのは難しい」)

論理的に考えるとき,思考方法を私たちの日常思考法から,
論理的思考法へとギアチェンジするのです.

日本人の日常思考のクセは,論理的に考えることから離れています.
そこから脱却すると,論理的に考えられるようになります.

4.論理的に考えるとは

1)論理的に考えるとは

論理的に考えるとはどういうことか,改めて考えてみましょう.

論理的に考えるとは,外界の状況に対して,
考える私自身の認識・判断・行動を,言葉を使って,
筋道を通して,納得して,決めるプロセスです.

つまり,外界は客観的にどのようなものか,
私にとって何なのか(認識),
私にどんな作用を及ぼすのか(利益か害悪か)(意味づけ・判断),
さらに私はどのように行動すべきかを決めるのです(行動決定).

このプロセスの特徴は多くのエネルギーと時間を要することです.

2)思考空間で言葉を使って考える

私たちはどのようにして考えているのかを,考えてみましょう.

まず,外界から情報が感覚器官を経由して脳に入ってきます.
物を目で見て,音や声を耳で聞き,匂いを鼻で嗅ぎます.

そういう情報が入ってきます.これは考えるネタです.
ここではデータと言いましょう.それを使って頭脳が考えます.

生物学的には,考えることは脳細胞の活動です.

しかし,私たちは考えることは心の活動だと認識しています.

だから,ここでも心で考えるとして,その概念的な空間を思考空間と呼ぶことにします.

人が猿から進化する途中では,思考は心にイメージ(画像)が
次々と浮かんで進行したと,推測されています.

つまり,外界からのデータ(情報)を心はイメージとして捉え,
さらに連続したイメージ,つまり動画として捉えます.

そこから何かを着想し,それもイメージとして浮かび上がったと推測されます.
そのイメージを他人に伝えるために,言葉が発明されたと考えられています.

イメージは言葉となって表現されます.
言葉は考えることにも使われます.
言葉を使うと思考はグンと進みます.

言葉と言葉を組み合わせるとより高度な思考ができます.
その結果,筋道を通して考えることもできるようになり,
考えたことについて納得することもできます.

3)論理的に考えるプロセス

心の思考空間におけるデータ(情報)のインプットから
行動決定までの論理的思考プロセスを,もう少し詳しく見てみましょう.

まず,情報を小さな単位に分解したり,簡単化して考えます(分析).
小単位化や簡単化しないとうまく考えられません.

次に,それを客観的に再構成したり,自分なりに再構成して(総合),
外界がどのようなものかを認識します(認識).

自分なりに再構成したものは自分の考える姿なので,
真の外界とは異なっているでしょう.

さらに,再構成された外界の姿と,
判断の拠り所となるエビデンス(根拠,証拠)と自分の知識,
世界観や信念と照らし合わせて,
外界の意味づけを行い(意味づけ),外界に対するある判断を下します(判断).

続いて,外界に対して自分がどういう行動をとるかを考えます.
ここはいろいろな案をシミュレーションします(思考実験).
「あーでもない,こーでもない」と考え続けることです.

その中から最善または次善と思われるものを選択し,自分の行動を決めます(決定).

論理的思考は,上で述べたように,このプロセスの一つひとつを,
言葉を使って筋道を通して納得できる結論に至るプロセスです.
多くのエネルギーと時間を使うことが理解できます.

ちなみに,この全プロセスを論理的思考によらず,
瞬時に通り抜けて判断することを直感と言います.

直感は論理的思考とは異なるプロセスです.
直感は人が判断する一つの重要な方法ですが,ここではこれ以上触れません.

4)論理的思考を円を描くことにたとえる

論理的思考を,紙の上に円を描くことにたとえてみましょう.
平坦な紙を用意します.その上に,コンパスを使って円を描きます.
こうするとどこでもきれいでかつ均一な半径を持つ正確な円が描けます.

このような円を描くには,まず平坦な紙という整備された場所が必要で,
次にコンパスというツールが必要です.

論理的思考も同様です.
紙に対応するのは整備された思考空間で,
それは論理的思考の基本であり前提です.
整備されているとは,それを身に付けていることです.

コンパスに対応するのは,論理的思考のツールです.
論理的に考えるには,適切なツールが必要なのです.

私たちは,整備された思考空間,つまり論理的思考の基本を身に付けて,
論理ツールを使って思考すると,はじめて論理的思考ができ,
納得できる結論を得ることができるのです.

論理ツールは2種類(論理ツール①,②)あり,
論理ツール①は基本論理語で,
論理ツール②は言葉を用いた論理プロセスです.

具体的には,演繹法,帰納法,仮説法,仮説演繹法,アナロジーです.

【論理ツール①】
論理的に考える ―論理ツール①(基本論理語)とは―

【論理ツール②】
論理的に考える ―論理的思考の基本―

それに対して,凹凸のある砂地にフリーハンドで円を描くことは,
非論理的思考にたとえられます.

凹凸のある砂地では描く線はいびつになります.
ましてやフリーハンドで描けば,均一な半径にはなりません.
正確な円ではなくいびつな円しか描けません.

整備されていない思考空間(非論理的思考空間)で,
論理ツールを使わないで思考(非論理的思考)しても,
論理的で納得できる結論は得られません.

論理的思考の基本は身に付けるべき論理的思考の前提であり,
論理ツール①,②は論理的思考の重要なツールです.

5.まとめ

1)論理的に考えることは,頭脳の活動であり,人の本性で易しいはずです.

2)しかし,現実には考えることは難しいです.

その理由は
①考えることは多くのエネルギーを消費するからです.
②論理的に考えることは,私たち日本人の日常の思考法とは異なるからです.

3)論理的に考える能力を身に付けるには,考えるための教育を受け,練習問題を解き,現実問題で実践することです.それには,推進力(モチベーション)が必要です.

4)論理的に考えるとは

①外界の状況に対して,考える私自身の認識・判断・行動を,
言葉を使って筋道を通して納得して決めるプロセスです.

②そのプロセスは以下のとおりです.
まず,外界から情報(データ)が感覚器官を経由して脳(心の思考空間)に入ってきます.
それらのデータ(情報)について,言葉を使って考えます.
言葉と言葉を組み合わせて思考して,筋道がとおり納得できる結論を得ます.

③考えるプロセスを詳しく見ると以下のとおりです.

分析:データ(情報)を小単位化・簡単化して分析し

総合:それを総合して

認識:外界を認識します.

意味づけと判断:その意味づけと外界に対する判断を,
エビデンス(根拠,証拠)と自分の知識,世界観や信念と照合して,下します.

行動決定:思考実験して自分の行動を決定します.

論理的思考:分析から行動決定のプロセスの一つひとつを,
言葉を使って筋道を通して納得できる結論に至るプロセスです.

5)整備された思考空間と論理ツール①,②
整備された思考空間,つまり論理的思考の基本を身に付けて,
論理ツールを使って思考すると,はじめて論理的思考ができます.

論理ツールは2種類(論理ツール①,②)あり,
論理ツール①は基本論理語で,論理ツール②は言葉を用いた論理プロセスで,
具体的には演繹法,帰納法,仮説法,仮説演繹法,アナロジーです.

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